steinデザイナー、浅川喜一朗ってどんな人?|シュタイン
こんにちは。ブランド古着のKLDです。
トレンド感のあるオーバーサイズのシルエットの中に、トレンドだけでは終わらない独自の美しさや緊張感を孕んだブランド、stein(シュタイン)。
今回は、そんなsteinのデザイナーである浅川喜一朗さんについてご紹介したいと思います。
- 改めてsteinってどんなブランド?
- 浅川喜一朗さんについて
- steinを形作るもの
という形で浅川喜一朗さんというデザイナーを深掘りしていこうと思います。
目次
steinとは
stein公式Instagramより引用 ssstein_design
stein(シュタイン)は、2016年にデザイナー、浅川喜一朗氏が立ち上げた日本のファッションブランドです。
ブランドコンセプトは、
「Stillness and motion , minimal and maximal , mode and tradition.」(静けさと動き、最小と最大、モードと伝統)
「無から有へ。そのはざまの部分を表現する。」
デザインはオーバーサイズのものが多く、一見トレンド感の強いブランドに見えますが、根底にあるのはトレンドというだけでは収まらないデザイナーのこだわりです。
steinの大ぶりなシルエットは、トレンドだからその表現を選んでいるというよりは、ドレープや着た時のシルエットの美しさを追求した結果だそう。
デザイナーの浅川さんは熱狂的な古着好きで、そこから受けた影響もsteinのデザインには反映されているようです。
90年代のマルタンマルジェラや、フィービー・ファイロ在籍時のセリーヌなどからも影響を受けているそうで、浅川さんのフィルターを通して様々なものを昇華した服作りから、今後も目を離せないブランドです。
デザイナー
浅川喜一朗さん 引用 mistore.jp
デザイナーは、浅川喜一朗さん。
1986年、山梨県生まれ。
東京学芸大学を卒業した後、会社勤めを経て原宿のセレクトショップ、ナイチチのスタッフとしてファッションの世界へ。
ナイチチは古着屋からスタートし、のちにインパクティスケリー(inpaichthys kerri)などのオリジナルブランドも展開した非常に著名なセレクトショップです。(現在は閉店。)
そのナイチチでの経験を活かし、2016年4月にセレクトショップ「carol(キャロル)」をオープン。
同年、steinを立ち上げ、デザイナーにの道を歩むことになります。
現在はcarolのオーナー業も決しておろそかにはせず、店頭に立ち続けながら、steinのデザイナーとしての創作もおこなっています。
steinを形作るもの
セレクトショップ「キャロル」
ブルーの扉が特徴的な初代carol(現在は移転済み) 引用 houyhnhnm.jp
steinを語る上で欠かせないのが、浅川さんの経営するセレクトショップである、「carol(キャロル)」です。
「キャロル」という店名は、讃美歌を意味する言葉。
浅川さんが自らセレクトするブランドや古着に作り手のエネルギーを感じるということで、それを賛美するという意味を込めています。
店舗を始めたきっかけは、勤務していたナイチチの閉店でした。
閉店が決まった際に独立を決心して、キャロルを立ち上げることに。
2016年1月にナイチチが閉店して、同年4月にはキャロルをオープンしたとのことで、かなりのスピード感です。
その準備期間の短さゆえ、店頭に置く商品の買い付けがし切れず、開店当初は限られた商品で営業をおこなっていたそう。
その限られた商品の中のひとつが、90年代の状態のいいリーバイスのデニムパンツ250本だったそうです。
キャロルでは、そのリーバイスのヴィンテージデニムを顧客に履いてもらい、イメージに合うように浅川さん自らカスタマイズするということをして販売していました。
3本のパンツを解体し、それを1本に仕立てるというようなことをしていたそうで、話を聞いただけでも、何とも手間と時間のかかりそうなスペシャルなアイテムです。
実際に作るのに20時間くらいかかるそうで、その商品は15本くらい作ったところで断念したそう。
キャロルはその後も順調に経営を続けており、2021年4月には新しい店舗へと移転して、さらに人気を集めています。
こだわりの強い浅川さんの目にかなうセレクトの数々は、ファッション好きの顧客からかなりの信頼を得ているといえるでしょう。
古着への愛
前述でお話したように、元々自身のセレクトショップで古着を扱ったり、ナイチチで古着の販売もおこなっていたことから、浅川さんは尋常でない古着好きのデザイナーとして知られています。
学生時代から古着にハマっており、時には友人か借金してまで欲しいものを手に入れていたそう。
なんでも、その借金をしっかりと一度返済するために地元で一度就職するなど、進路にも影響するほどにお金を借りて、古着につぎ込んでいたようです。
アトリエに保管されている浅川さんの古着コレクション 引用 mensnonno.jp
その後、古着好きが高じてナイチチで働くようになり、本格的にファッションの道に入ります。
前述で、古着のリーバイスを解体していたエピソードがありましたが、売り物のリーバイス以外にも様々な古着を解体して研究していたそうです。
「名作とされる服の美しさの理由を知りたい」というのが理由だそうで、解体することで、「パターンやディテールなど、名作は名作たるゆえんが詰まっていた」ことに気付くことが出来たようです。
引用 wwdjapan.com
中でもラルフローレンのトレンチコートには、解体してみて初めてわかる素晴らしさに非常に感銘を受けたそうです。
「『ラルフローレン(RALPH LAUREN)』のトレンチコートはすごかった。芯地を入れず、膨らみをもたせるような縫製、極端に太いアーム。体にまとうようなシルエットを作るために、全てのディテールが考え込まれて作られていた」
引用 wwdjapan.com
古着のことをここまでの熱量で語れる、研究できる浅川さんの情熱は、そのままsteinのデザインへと昇華されています。
インプットの大切さ
前述の古着の解体、研究に関してもいえることですが、浅川さんのデザイナーとしての強みは、その「インプット」にあるといえます。
現在、「セレクトショップのオーナー」と「デザイナー」という二足の草鞋を履き、非常に忙しい日々を送る浅川さんですが、インプットの時間はとても大切にしているそうです。
「キャロル」の店舗営業が終了したあと、集中してインプットの時間をとっているそうで、写真集を見たり、映画を観たりといったことに集中します。
インプットしたものから影響を受けてコレクションを作ることもしばしばで、2018年秋冬シーズンでは、ドイツの写真家、ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)の写真集に収録された1枚の写真から着想を得たコレクションを展開しました。
セットアップのパンツスーツを着て煙草を吸いながらパリの街に佇む1人の女性の写真で、女性差別の強かった当時の世相の中でのパンツスーツ姿の女性というダンディなモチーフは、写真の美しさ以上に浅川さんにインスピレーションを与えた模様。
また、2020年春夏シーズンには、「タイポグラフィ(文字を用いたデザインのこと)」の美しさをテーマにしたコレクションを展開するなど、デザインの着想源は様々なインプットから生まれていることが伺えます。
「今必要なものはと問えば、「『精神と時の部屋』(笑)。とにかく時間がほしい」
引用 wwdjapan.com
と、本人もいうほどに多忙な日々を過ごしている浅川さん。
そんな日常の中でも、インプットの時間は欠かさないようにし、さらにsteinの世界観を広げていきたいということです。
メンズ服をベースにしたユニセックスな世界観
デザインについてですが、steinの服を見た時に初めに感じる印象は、やはりたっぷりとした生地感の余裕のあるシルエットではないでしょうか。
steinというブランドは、基本的にユニセックス展開で、男女どちらのユーザーが着てもいいようにデザインされています。
コレクションのルックなども、あらゆる人種、性別のモデルが自由にsteinのアイテムを着こなしている様子が見れますよね。
男女どちらが着ても違和感のないデザイン stein公式Instagramより引用 ssstein_design
そんなsteinの服のパターンは、メンズ服をベースに作られているそうです。
steinにはパタンナーが在籍し、浅川さんと一緒に服作りをおこなっているそうですが、元々はメンズ服のパターンを作っていた方だそうで、steinの服作りをおこなう際にも最初はメンズ服をベースにデザインを作り始めるそうです。
そこから男性らしさをあえて削ぎ落としていき、ユニセックスなムードを強めていくのだそう。
性別だけではなく、年齢の制限も感じさせないデザインは浅川さんの意図するところで、ブランドのルックで様々な年齢のモデルさんがsteinを着用していますが、全員が思い思いにsteinを着こなしているといえます。
steinのコンセプトとして、「無から有へ。そのはざまの部分を表現する。」というものがありますが、男でも女でもない、その「はざま」の絶妙な感覚がsteinの持ち味となっています。
steinというブランドの在り方
steinは2016年の設立から6年が経ちました。
浅川さんは、steinというブランドを、設立当初からとても慎重に育てており、steinの世界観を壊さないよう、卸先や、売り方についてもとてもこだわって展開してきました。
また、浅川さんの持つ世界観を余すところなく表現するために、steinにはメインラインとは別に、「stein(-) (シュタインマイナス)」、「stein(concrete) (シュタインコンクリート)」、「stein(black) (シュタインブラック)」などを、コンセプト別に不定期で発表しています。
stein(black)より。深みのある黒一色の服 引用 fashion-press.net
このように、ブランドの作り方に対して非常に繊細な感覚で臨んでいる浅川さん。
「でも店を大きくしたり、増やしたりといった、横に広げていこうみたいな野望はなくて。こんな辺ぴなところに来て下さるお客さまに、自分の言葉で『シュタイン』の良さを伝えたい。水の波紋が広がるように静かにゆっくりと届いてくれればうれしい」
引用 wwdjapan.com
こちらは2018年の浅川さんの言葉ですが、その時の意思はそのままに、現在はランウェイなどで作品を発表することにも興味があるそう。
ブランドの核はしっかりと維持しつつ、さらにブランドの世界観を深化させるために試行錯誤の日々をおこなっているようです。
steinはドイツ語で、アインシュタイン、ヴィトゲンシュタインのようにフロントに何か言葉がつくことで、特定の一族の名前になる単語です。一見普通だけど、何かと結びつくことで特別なものになる。同じように僕がつくる服が、手に取ってくださった方に寄り添いつつ、着てもらうことで特別な一着になっていく。そんな思いを込めました。
引用 mensnonno.jp
顧客が自分の作った服を喜んでくれる姿が何よりも嬉しいという浅川さん。
今後も、steinを通して私たちに様々な美しいものを見せてくれるのではないでしょうか。
ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んでくださりありがとうございました。
浅川喜一朗さんのデザインの原点や経歴など、steinというブランドを形作る要素をご紹介させていただきました。
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