45Rデザイナー、井上保美さんってどんな人?|フォーティファイブアール
井上保美さん 引用45r.jp
こんにちは。ブランド古着専門店のKLDです。
今回は45R(フォーティーファイブ・アール)のデザイナー兼、副社長の井上保美さんをご紹介します。
「気持ちの良い服を、喜んで着ていただきたい」との思いをベースに服作りを行っている45R。
1978年に創業して以来、着心地とデザインの良さを進化し続けて、国内外に多くのファンがいるブランドです。
そんなブランドを立ち上げたときから現在まで、第一線で活躍しているのが井上保美さん。
- 45Rと井上保美さん
- 服作りのこだわりとは
- 井上保美さんを形作るもの
という形で、デザイナーの歴史を紐解きながら、その人物像に迫っていきます。
目次
45Rと井上保美さん
1978年、45Rは「45rpm studio」として立ち上げられました。
当時は古き良きアメリカの服をイメージした展開で、80年代に大人気だったロックバンド・チェッカーズのメンバーの衣装をプロデュース。
メンバーがプライベートでも45Rの服を着ていた影響もあったのか、10~20代の年齢層にファンの多いブランドでした。
その後、Umii908、R by45rpmなど、さまざまなブランドを展開。
現在は45Rとして統一され、カジュアルながら品がよく、着心地のいい服へと変化しました。
日本国内で42店舗、海外では17店舗を運営。
2000年のニューヨーク店オープンをきっかけに海外進出を果たし、パリや香港にも出店しました。
2017年にはクールジャパン機構から出資を受け、ファッションブランド初とニュースにもなりました。
そんな45Rの創業時から、デザイナーとして活躍しているのが井上保美さん。
40年以上、ずっとデザイン画を描いています。
特徴は、ゆったりとしたシルエットと、生地や縫製などの細部にまでこだわった、高品質で丁寧な服作りを行っていること。
井上保美さんの私服スタイルが雑誌で紹介されたことをきっかけに、ブランドだけでなくご自身も人気を博し、『井上保美さんのクロゼットから』『井上保美さんの365日着こなし見本帖』などが出版されました。
『井上保美さんのクロゼットから』
引用kurashi-to-oshare.jp
『井上保美さんの365日着こなし見本帖』
引用hmv.co.jp
服作りのこだわりとは
「気持ちの良い服を、喜んで着ていただきたい」との思いをベースに服作りを行っている45R。
そんな45Rの顔と言っても過言ではないのが、デニムパンツです。
1991年から品質の高いオリジナルのデニム生地を作り始め、「デニムジーンズは大量生産品」というイメージを少しずつ変えていきました。
「藍染」を初めてデニムジーンズに使用したのも45R。
藍に似ている化学染料を使って染めることを「インディゴ染め」と呼び、このインディゴ染めがデニムの分野では主流になっています。
そんななか、45Rは天然染料である藍を使って染めたデニムを開発。
2000年にオープンしたニューヨーク店で発売したときには、「プレミアムジーンズ」と高い評価を受けました。
現在も藍染のデニムパンツは定番商品として人気。 「再び6.5藍比古比女(藍 濃)」
引用shop.45r.jp
このようなエピソードからも伝わってくるように、デザイナーの井上保美さんをはじめ、服作りに携わる人たちが納得のいく素材を使っています。
通常、デザインをしたあとメーカーの既成の生地を選び、縫製工場で服を製作するブランドが多いのですが、45Rでは、原料や糸、生地を作るところからスタートしています。
たとえば、100年使われていたヴィンテージの服の微細な部分まで、顕微鏡を使って研究したり、コットン糸の一本ずつに、こんにゃく糊でコーティングし、リネンニットに似た感触を再現したり。
また、どの季節でも肌触りのいい服を作るために、手紬ぎと手織りで作られているインドのカディコットンを使うなど、いろんな形やいろんな国からいいと思ったものを取り入れながら、服作りをしています。
カディコットンを使用したワンピース 「カディのストライプティアードドレス」
引用shop.45r.jp
納得のいく素材はどこにも存在しないので、自分たちで創るしかないのです。
「ないものづくり」の精神はここから生まれました。
私たちが大好きなのは、素朴で武骨な、素材のパワーを感じる服。世界各地に伝わる伝統服を学びに現場まで赴くこともあります。さらに求めるのは、エレガントで品の良さも兼ね備えていること。そして何よりも、袖を通した時に気持ち良いこと。言ってしまえば、マニアックで、レアで、コアということなのかもしれません。「ないものづくり」への挑戦はいつまでも続いていくのです。
45R 公式サイト 「ないものづくりへの挑戦」より 引用45rpm.jp
こういったこだわりから、自然と価格は高めの設定になっていますが、服作りへのスタンスや、着心地とデザインの良さから、幅広い年齢層に多くのファンがいます。
さらに、45Rならではのサービスの一つには、「満足工房」があります。
ワンピースをシャツやブラウスに作り替える、白いシャツをネイビーに染めるなどのリメイクをはじめ、穴あき補修や丈詰めなどのリペアを依頼できる、至れり尽くせりのサービス。
特に代名詞になっているデニムジーンズに関しては、染め直し、色を薄くする、黄ばみや毛羽の除去、ダメージ加工などを利用して「自分だけのジーンズ」にリメイクすることができます。
「45Rとお客様のお付き合いは、買っていただいて終わりではありません。むしろ、それからが始まりです。」
45R 公式サイト 「満足工房」より 引用45rpm.jp
45R のブランド名の由来は「45 Revolutions Per Minute」。
レコード盤の回転数を意味していて、「擦り切れるまで聴かれるレコードのように、長く着こまれる服でありたい」という願いが込められています。
服作りへのスタンスや、満足工房のようなサービスから、この思いが一貫していることが伝わってくるのではないでしょうか。
井上保美さんを形作るもの
デザイナーになるまでと、それ以降の活躍
DO!FAMILY時代の井上さん 引用andpremium.jp
井上保美さんは、1954年1月23日生まれ。
実家は広島で呉服屋を営んでいて、着物のデザインや繊細な色彩に触れながら育ちました。
絵を描くことと服が大好きで、女子美術大学短期大学部に入学し、造形を専攻。
卒業した後はアルバイトで靴のデザインをしていましたが、友人の声かけで「ドゥファミリー」というブランドへ。
販売やスタイリングを担当しました。
DO!FAMILY 引用do-family.co.jp
雑誌「MCシスター」にドゥファミリーが掲載され、そのスタイリングを手掛けたのが井上保美さん。
そのときは「太田保美」とのお名前で仕事をしていたのですが、後日井上保美さんと同一人物だと気がついた45Rファンの中には、MCシスターを永久保存版にしている人もいるそうです。
1978年に「45rpm studio」をスタート。
「おしゃれに必要なのはイメージトレーニング」と言い、映画や写真集、街ゆく人たちの姿を観察。
そのおしゃれの種を自分のなかで育み、デザイン画としてアウトプットすることを繰り返しているそうです。
2006年にはブランド名を「45R」に変更。
服のデザインはもちろんのこと、ものづくりの過程や店舗の内装にも関わっています。
日本国内で42店舗、海外では17店舗を運営し、海外初進出は2000年のニューヨーク店のオープンでした。
メイド・イン・ジャパンのものに視線を向け、その魅力を世界に伝えていく活動もスタートし、日本文化の学びなおしとして40代で茶道を始めたそうです。
そんな流れもあり、2017年にクールジャパン機構から出資を受けました。
ファッションブランドが出資されたのは初めてのことで、大きなニュースにもなりました。
また、1月23日の井上保美さんの誕生日は「123の日」と名付けられ、毎年何らかのイベントが開催されたり、店舗で買い物をしたお客さんにちょっとしたお土産がついたりと、地に足をつけながらも、遊び心のある活動が続けられています。
着こなしについて
井上保美さんが好きなのは、スタンダードでメンズライクな服。
色合いは紺色、茶色、白、グレーが基本。
そこにパールネックレス、ストールといった小物を添えて印象を変えているそうです。
Tシャツとデニムは世界中にありますが、それをどうやって格好よく着るかをテーマにしていて、それがブランドコンセプトにつながっています。
Tシャツとデニムにこの小物を合わせたらかわいい、格好いい、今年っぽいという感覚的なことも、もちろん大事です。
服にはモードの側面もある以上、それは当然のこと。でも、それとは別に、服はその背景にある物語、着ている人の生き方、人生をも物語るもの。それは、哲学であり、アイデンティティであり、スタイルでもあります。
『井上保美さんの着こなし見本帖365日』(主婦と生活社)より引用
井上保美さんのデニムの原点は「リーバイス501」のヴィンテージ。
デニムをもっとエレガントにはきたいとの想いから、毎年素材やシルエットにこだわって、「今の自分」に似合うデニムをはいているそうです。
年齢を重ねるにつれ体型が変化していくので、還暦を過ぎてからは、「リーバイス501」のヴィテージはシャビ―過ぎて似合わないと感じるようになったとのこと。
「今の自分」に似合うデニムを探したところ、股上がウエストまである、太めのストレートタイプを着ると決めました。
そしてTシャツ。
たとえばカジュアルに、気軽に着るならコットン、きれいめにしたいなシルクといったように、シンプルだからこそ、素材とシルエットをしっかり確認。
質感、ちょっとした襟のあき具合、身体とのフィット感、丈などでがらりと印象が変わると語っています。
雑誌掲載をきっかけに人気急上昇
簡単に着こなせるように思えてしまうTシャツとデニム。
井上保美さんの抜群のセンスと審美眼にかかると魅力が増すと知れ渡ったのは、雑誌で紹介されたことがきっかけでした。
ナチュリラという雑誌の別冊である『大人になったら、着たい服』に掲載されると、たちまち「格好いいのに女性らしい」と大人気に。
「こんな女性になりたい」「井上さんのコーディネートで本を一冊作ってほしい」など、40~70代の女性からたくさんの感想が届き、ずっとデザイナーとして裏方に徹していた井上保美さんが、表舞台に出ることになっていったのでした。
すっかり人気になり、たびたび表紙などを飾るように。こちらは2022春夏号 引用shop.45r.jp
雑誌に掲載された2015年以来、『井上保美さんのクロゼットから』『井上保美さんの365日着こなし見本帖』など次々に本を出版。
コーディネートだけでなく、アイテムの選び方や自宅での収納法まで紹介されました。
いずれも増刷となり、今でも書店に並んでいます。
井上保美さんの好きなもの
「おばあちゃんになっても好きでいられるかどうか」。
井上保美さんがものを選ぶときの基準だそうです。
捨てるのがイヤなので、高くてもいいものを購入するのは、若かりし頃から変わらないとのこと。
心惹かれるのは、アンティークや手仕事を感じるものだという点もずっと同じで、なかでも食器、アクセサリー、眼鏡などが手元にたくさんあります。
食器は花柄のものが好きで、アンティークのものは45Rの服をデザインするときのインスピレーションにもなっています。
また、アクセサリーのなかではパールが特別な存在とのこと。
コレクションしているパールのアクセサリー 引用andpremium.jp
10代の頃から切り抜きを集めてスクラップしていて、その切り抜きのひとつがフランスの建築家シャルロット・ぺリアンの姿。
鍛えられた上半身はパールのネックレスだけを身に着け、ボトムはメンズのウールスラックスをはいている。
このような出で立ちで、力強く遠くの山々を眺めて居る写真でした。
井上保美さんは、「たぶんその写真を見た時から、パールに心惹かれるようになったのだと思う」と語っています。
シャルロット・ぺリアン 銚子での撮影 引用japandesign.ne.jp
そして、井上保美さんにとっては眼鏡=リーティンググラス。
視力がよかったころからずっと眼鏡にあこがれていて、老眼鏡が必要になったときは嬉しかった、とのこと。
フレームはパリの蚤の市で買った丸い形が多く、レンズは日本で作っているそうです。
コレクションのメガネたち 引用andpremium.jp
また、暮らしのなかに欠かせないのはお花で、自宅マンションにしつらえた茶室や、リビングルームなどに飾ったあと、気に入ったものはドライフラワーにして保存しているとか。
70歳近くなった今、「今後、実現したいことは何ですか?」と問われた時、
変わらずに仕事を続けていきたいです。本当はボチボチ好きなゴルフでもして過ごそうかなと思っていたのですが、精神科医・和田秀樹さんの本に生涯、現役でいることが老け込まないコツと書いてあったので、仕事は辞めないことにしました。ずっと元気で働けることを実現したいです。
&Premium 「あの人のスタイルをつくっている、大人のもの選び。井上保美さん後編より引用
と答えています。
好きなものに対する基準が年を重ねても変わらない、瑞々しい感性。確かな審美眼。
相手の意見に耳を傾け、変化していく柔軟性。
45Rのデザインがシンプルでありながらずっと支持され続ける秘訣は、こんなところにもあるのかもしれません。
ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んでくださりありがとうございます。
45Rを立ち上げ、ずっと第一線でデザイナーとしてこだわりのアイテムを作ってきた井上保美さん。
さりげない、でも強いこだわりがあるからこそ、45Rで素敵な洋服をデザインできるのでしょうね。
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