日本の伝統技術「裂き編み」とは|現代のブランドへの影響
こんにちは。
ブランド古着のKLDです。
東北で生まれたと言われる日本の伝統的な技術、「裂き編み」。
古布を裂いて糸状にし、ニットのように編んでいくという技法で、サスティナブルなものづくりの一貫として注目されています。
今回は、
- 裂き編みって何?
- 裂き編みの歴史
- 一般的な編み物と何が違う?
- 裂き編みの魅力
- 裂き編みと関係の深いブランド
という形で、「裂き編みってどんな技術なの?」ということについてお話していきたいと思います。
現代のブランドの中でも裂き編みを使ってアイテムを作るブランドは多く存在します。
そういったブランドについてもご紹介していきますのでぜひご覧くださいね。
目次
裂き編みって何?
裂き編みとは、その名前の通り「布を裂いて編む」手芸のことで、古くから日本の伝統技術として受け継がれています。
古着や古布などをテープ状に裂き、その細いテープを編み糸として使うのが裂き編みの大きな特徴です。
柔らかい綿シャツや絹の着物、カラフルな柄物シーツなど、様々な布地を使うことによって多彩な編み地に仕上がります。
アイテムはコースターやバスマット、バッグなど、様々なものを作ることができます。
また裂き編みは、「捨てるはずものを新しい姿に蘇らせる」という、リサイクル要素もあるのです。
近年では、裂き編みを専門とするハンドメイド作家さんや、裂き編みを取り入れたデザインを展開しているファッションブランドなども存在し、日本の伝統技術をより身近に感じられるようになっています。
裂き編みの歴史
裂き編みは古くから受け継がれる伝統技術ですが、その詳しい起源は実は分かっていません。
そのため裂き編みは、布を裂いて織る「裂き織り」という伝統技術から派生した手仕事だといわれています。
裂き織りの羽織 引用iroai.jp
裂き編みが生まれる元となった裂き織りは、江戸時代中期、東北地方で生まれました。
当時、寒冷な気候で綿が育たない東北地方では、布は貴重品として扱われていました。
貴重な布を無駄にしないために、東北の人々は衣服や布団などを使い古してもすぐに破棄せず、布地をテープ状に裂いてもう一度生地にするという「裂き織り」を生み出したのです。
そんな裂き織りからヒントを得て、裂き編みが生まれたといわれています。
編み物は織物と比べ、風合いが柔らかく保温性が高いため、寒い東北地方に適している裂き編みが生まれたのではないかと予測されます。
その後、明治時代に突入すると東北地方にも綿繊維が豊富に入ってくるようになり、裂き織りと裂き編みは徐々に衰退していきました。
しかし、その伝統的な手仕事は時代を超えてもなお愛され続けています。
現在では、裂き編みに魅了された人々が、時代に沿うデザインやアイテムを生み出し、世の中に発信しています。
一般的な編み物と何が違う?
一般的な毛糸の編み物
布を裂いて新たな形に姿を変える裂き編み。
一般的な編み物と一体何が違うのでしょうか。
裂き編みと一般的な編み物の大きな違いは、ズバリ「裂く」ことです。
一般的な編み物は、毛糸や麻糸などの編み糸を使用しますが、裂き編みは糸の代わりに裂いた布を使います。
そのため裂き編みは、裂くための古着やハギレを用意したり、「裂く」工程が必要だったり…普通の編み物とは違う作業も含まれます。
また、使う材料が違うため、仕上がりの見た目にも違いが生まれます。
裂き編みは、もともと布帛だった生地を裂いて編むため、柔らかな質感ながらも生地感の残るしっかりとした見た目が特徴的です。
一方で一般的な編み物は、裂き編みより細い編み糸で編むため、アレンジの利いたデザイン性に特化した見た目が印象的。
裂き編みも一般的な編み物も「編む」こと自体は共通していますが、編むまでの準備や仕上がりの見た目などが異なるのです。
さらに裂き編みは、服や布の持っている思い出も一緒に、新しいアイテムとして残すことができます。
「裂き編み」と「裂き織り」の違い
「裂き編み」と「裂き織り」、一番の大きな違いは「編み物」と「織り物」、それぞれ別のジャンルだということです。
布をテープ状に裂く作業は同じですが、裂き編みは、少なくとも指さえあれば編むことができます。
一方で裂き織りは、織り物であるため「織り機」が必要になってくるのです。
太めの編み針や指で編む「裂き編み」 引用mainichigahakken.net
織り機を使う「裂き織り」 引用visithachinohe.com
また、編み地は緯糸だけ、織り地は経糸と緯糸で構成されているため、作り方も異なります。
編み物は結び目を作り「一目ずつ」編み地を作っていきますが、織り物は経糸と緯糸を交差して「一段ずつ」布地を作っていきます。
糸の構成や作り方が違うため、出来上がりの風合いが変わってくるのも裂き編みと裂き織りの違いを見分けるポイントです。
さらに、作っている最中にも裂き編みと裂き織りの違いを感じることができます。
裂き織りは、経糸と緯糸の構成から「こういう模様になるだろうな」と、ある程度の予想ができます。
しかし裂き編みの場合、ずっと緯糸を編んでいるため「どんな模様になるのだろう」と、仕上がりに対するワクワク感が高いのです。
見た目はどちらも似ていますが、その作り方や糸の構成の違いなどを知ると、より深く裂き編みを楽しめるでしょう。
裂き編みの魅力
「布を編む」といった普通の編み物とは一風変わった編み物である裂き編み。
裂き編みは、“編み物”というジャンルから一線を画す特別な魅力があります。
ここでは、そんな裂き編みの魅力についてお話します。
立体感のある独特な感触
裂き編みの魅力といえば、布を使用することによって生まれる「立体感のある独特な感触」です。
厚みのあるぼこぼことした質感は、布からなるテープ状の糸だからこその風情があります。
ふかふかだけどしっかりとしている、この絶妙な触り心地が裂き編みの魅力なのです。
もともと洋服やシーツだった布から裂いているため、生地感の残る感触を体感できます。
また、始めは固い質感かもしれませんが、使うほどに柔らかくなり、馴染んでいく過程も楽しめます。
裂き編みだからこその立体的なフォルムや独特な感触は、普通の編み物では表現できないでしょう。
無限大の表情を作り出せる編み地
ランダムな編み地が楽しいダニエラグレジスのバッグ
裂き編みは使う布の色や柄、編み方によって、思いがけない編み地と出会うことができます。
その「無限大の表情を作り出せる編み地」こそが裂き編みの魅力です。
一般的な編み物は、編み糸の種類や色を選択した時点で「どのような仕上がりになるか」「どんなデザインにしようか」など、ある程度イメージを膨らませやすいでしょう。
しかし裂き編みは、裂いた布を黙々と編み進めていく中で、予想もしなかった模様が現れることがあるのです。
元の布と、裂き編みによって生まれ変わった編み地の表情の違いを楽しめます。
また、裂いた布端から飛び出す繊維も裂き編み特有の愛嬌です。
完璧ではない不揃いな風合いが、裂き編みの愛らしい要素となるのです。
デザインを決めなくても、自由に編むだけでデザインができていくのは裂き編みだからこその魅力です。
生地を無駄にしないリサイクル精神
古布を裂いた裂き編みの糸 引用craftie.jp
裂き編みの魅力には「生地を無駄にしないリサイクル精神」という要素も挙げられます。
「裂き編みの歴史」でもお話したように、裂き編みは布を無駄にせず大切に扱うために生まれた技術です。
まだまだ布が貴重な時代に生み出された裂き編みは、技術だけでなく「ものを大切にする」といった精神も時代を超えて受け継がれています。
現代でも裂き編みが注目されているのは、伝統技術でありながら比較的簡単に作業できることと、「ものを大切にしている」という実感があるからでしょう。
また、裂き編みに使う布は裂いたあと何の処理もいらないうえ、布の耳まで使えるためゴミを最小限に抑えられます。
裂き編みは、資源を最大限に活かす地球に優しい伝統技術なのです。
裂き編みと関係の深いブランド
ここでは、裂き編みと関係の深いブランドをいくつか紹介します。
どれも、そのブランドらしいデザインや方法で裂き編みを展開しています。
DANIELA GREGIS
2023AWコレクションより 引用fashionsnap.com
裂き編みクロシェバッグ kld-c.jp
まず紹介するのは、丁寧な職人技とユニークなデザインが魅力のイタリアのブランド、「DANIELA GREGIS(ダニエラ・グラジス)」。
ナチュラルな質感のアイテムを多く展開していますが、デザイン的にはただのナチュラル系ブランドでなく、エッジの効いた部分があり根強いファンを多く獲得しています。
そんなダニエラ・グラジスでは、裂き編みで作られたバッグを多く展開しています。
裂き編みバッグは、ダニエラで販売されている服の生地で作られているそう。
何よりも素材にこだわるダニエラの服から裂いているため、完成されたバッグの肌触りも格別です。
デザインはカラフルだったり、不規則な模様だったり、ダニエラらしい遊び心のある独特なナチュラルさが魅力。
また、一つ一つ手編みで作られているため、温かみのある素朴さも含まれています。
ラグジュアリーな雰囲気もしっかり際立っているため、ファッション感度の高いファンから厚い人気を集めています。
meagratia
過去のコレクションで使用した残布を裂き編みにしたグローブ laid-back.jp
日本のブランド、「meagratia(メアグラーティア)」では、主にウェアアイテムに裂き編みを取り入れています。
ジャケットやシャツ、パンツなどアイテムは様々で、裾や襟元などの服のパーツにディティールとして裂き編みを施しています。
裂き編みの生地には、過去のコレクションで使用した残布を活かしているそう。
メアグラーティアは、オリジナル生地を作るほど生地にこだわっているブランドのため、プレミアムな裂き編みディティールだといえるでしょう。
また、ブランドの軸となっているヨーロッパ古着の雰囲気の中に、見事に日本の伝統技術を反映しているメアグラーティア。
洗練された雰囲気があるのに、どこかクラフト感のある風貌に仕上げているのが魅力です。
rurumu:
シフォン生地の裂き編みを取り入れたつけ襟 引用 tumblr@rurumu-usagikanae
23SSコレクションより 引用 fashion-press.net
カルト的な人気を誇る「rurumu:(ルルムウ)」では、裂き編みをルルムウらしい毒っぽい可愛さに反映させています。
服や付け衿、スマホケースなど、様々なアイテムに裂き編みを取り入れています。
そもそもルルムウは、ハンドニットを展開しているブランドのため、他のブランドとは別格ともいえる裂き編みのアイデンティティが展開されています。
裂き編みに用いる布にシフォンを選んだり、リボンやレースで装飾したりなど、繊細かつ大胆なデザインが魅力です。
シフォンの裂き編みは、繊細で儚いイメージを作り上げながらも、しっかりとした存在感を放っています。
そして裂き編みのナチュラルが、ルルムウの“毒かわいい”要素を上手く調和させています。
snow peak
手作りワークショップが開催された裂き編みのキーホルダー snowpeak.co.jp
「snow peak(スノーピーク)」では、過去に体験型で裂き編みを取り入れていました。
過去にスノーピークが主催したキャンプイベント「FIELD WORK」の中で、裂き編みネックレスやキーホルダーを作るというワークショップが行われました。
内容は、テープ状に裂いたハギレを2本用意し、それらをねじって編んでいきネックレスを作るというものです。
比較的簡単な作業なため、子どもや裂き編み初心者でも楽しめる盛大なワークショップになったそう。
また、多くの人に裂き編みを知ってもらうきっかけとなったとのこと。
アパレルに強いアウトドアブランドのスノーピークならではの、裂き編みの取り入れ方だといえます。
また、snow peakのアパレルラインでは裂き織りのベストなども展開しています。
「裂き編み」ではありませんが、こちらは生地を裂くところから織るところまで手作業でおこなわれているという本格的な一着になっています。
mame kurogouchi
23SSコレクションより、裂き織りの発想を取り入れたルック mamekurogouchi.com
最後に紹介するのは、裂き編みではないのですが、裂き織りと関係の深いブランド「mame kurogouchi(マメクロゴウチ)」を紹介します。
日本の伝統技術を度々コレクションに反映させているマメクロゴウチは、2023春夏コレクションにも裂き織りの技術を用いています。
23春夏の着想となった「竹籠」をイメージしたというアイテムは、裂き織りの技術によって見事にイメージ通りに。
アイテムは、煤竹(すすたけ)のようなブラウンカラーを基調としたジャケットやノースリーブトップス、スカートなどを発表しています。
一般的な織り物では表現できない立体的なラインを、マメクロゴウチの力で裂き織りをふんだんに活かし、繊細に美しく仕上げています。
また、複数の素材感を楽しめる生地を使用し、立体感をより際立たせているとのこと。
また、2018AWシーズンにも裂き織りを取り入れたアイテムを展開していました。
18AWコレクションより、デニムと裂き織りを組み合わせたコート store.kld-c.jp
裂き織りをここまで上品かつ凛と力強いデザインに昇華させられるのは、ものづくりに真摯に向き合い、日本の伝統技術をリスペクトするマメクロゴウチの圧倒的な実力があるからでしょう。
ここまで読んでくださった方へ
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
日本で古くから愛されてきた技術、裂き編み。
サスティナブルなものづくりが注目される昨今において、改めて注目されていく技術なのではないでしょうか。
KLDでも今回ご紹介したブランドなど、裂き編みのアイテムのお買取を強化しています。
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